近年、日本の富裕層が節税対策の為に海外移住する事が多くなりましたが、
「所得税」と「相続税」では、非課税となる海外在住期間の要件が違います。
所得税に関しては、1年以上の海外在住により日本の非居住者となり
国内資産関連を除いては、海外の居住国で課税される事となりますが、
相続税に関しては、資産を持つ人と相続人の双方が海外在住10年以上
という要件があります。
但し、国際相続において日本の相続税が適用される場合でも、
故人の残した資産が「基礎控除」以下の場合であれば、申告の必要はありません。
基礎控除: 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
故人に奥さんと2人の子供がいる場合は、3人の相続人ですので
4,800万円が非課税となります。
海外における預金や金融商品等が、約50万ドル以下であれば、
日本の相続税の対象にはならないという事です。
相続税対策に関する国際税制
日本にある資産に関しては、相続人が日本の居住者であろうとなかろうと
日本で課税されるのですが、以前は海外にある資産に関しては
相続者が5年以上の海外在住であれば、日本では非課税でした。
例えば、シンガポールやマレーシアやカナダには相続税がありません。
受領する相続人が上記の様な国に移住すれば相続税が非課税になったのです。
ところが、国際化で日本人が海外に在住する事が頻繁になってきた為に
2017年に国税庁も税法を改正しました。
以前は、相続者が5年以上海外在住の場合でかつ海外に資産がある場合は、
日本の相続税を免除されましたが、2017年の税法改正により10年以上に延長され
かつ、財産を渡す側の人も海外在住10年以上という条件になりました。
日本の相続税は、全世界課税と言って、日本にある資産も海外にある資産も
課税の対象となりますが、
海外の資産に関しては、その国で相続税を支払っている場合は、
外国税額控除として、日本の相続税から控除出来ますので、
二重課税にはなりません。
いずれにしろ、現在では、親子共に、海外での長期居住を苦にしない超富裕層しか
相続税対策としての海外移住は使われる事が無くなりました。
この状況を少し緩和するには、相続者が国籍変更する事です。
親が海外在住10年の条件を満たしていれば、相続者が外国籍の場合、
相続時に日本国外の在住であれば、10年の要件は必要ありません。
仮に相続者が国内在住で外国籍の場合は、過去15年のうち、
10年以上の日本在住でなければ、課税されません。
この「過去15年中10年以上か以下か」という基準は、
「日本に短期的に在住している外国人がその期間に身内の不幸により海外資産にまで
日本の相続税がかかるのは理不尽である」という理由で作られたルールです。
過去ずっと日本に在住していた日本人が相続税対策の為に急に
国籍変更しても日本に住んでいる限り相続税を逃れる事は出来ないという事ですが、
国籍変更+海外在住であれば、10年ルールの適用外になるという事です。
概念としては、親と子供も共に一族で海外移住して、子供の世代は国籍変更
しているという事は、「実態として本当の海外移民」という事ですので、
かつ資産も海外にある場合は、「日本の相続税対策だけの為の移住ではない」
と判断されるという事です。
日本の税法改正前は、日米間の節税スキームとして、
親が日本に在住で、子供は米国に在住する場合の相続税節税の
タックススキームがありました。
まずは、米国に法人を設立して、そこに日本の資産を移し、
法人の株式を子供に相続するという様なスキームです。
知り合いの税務コンサルタントさんが、この様な方法を取っていた
記憶がありますが、今となっては、この様な海外を使った国際間の
節税スキームは全く使えなくなりました。
海外資産の現地国での取り扱い
海外の資産を相続人が受領する場合、Provate(検認裁判)という清算手続きが
必要となる国があります。
例えば、シンガポール、香港、米国、英国、マレーシア等の日本人が海外資産を
残す可能性が多い国々のほとんどは、この制度を持っています。
問題は、その手続きが終了するまで、数年かかる点です。
その資産が日本の相続税の対象となる場合、相続税の支払い期限は、
故人の死亡日より10か月以内ですので、税金のみを先払いする必要が出てきます。
また、海外での検認裁判には弁護士費用もかかりますので、
資産を受領する前に、様々な前払い資金が必要になるという点は注意が
必要です。
これを回避する為には、資産を持つ方の生前から「信託」等を設立して
信託の名義で資産管理をしておく等の早めの対策が必要となります。
まとめ
1、死亡者と相続者の双方が過去10年以上の海外在住でない限り課税される。
2、日本の相続税は海外の資産にも課税される。
3、相続者が国外の居住者で、かつ外国籍だと10年以上という基準は適用されない。
4、海外の資産は清算に時間がかかるので、相続税を支払う為に信託等を活用した対策が必要。
コメントを残す